太平山城の上方にそびえ立つ「太平國小(小学校)」は、生徒数が少ないことから2017年に廃校となった。しかし、市街や港全体を眺望できる地の利から、基隆という街の豊かな空間構造と歴史の文脈を読み解く要所となった。丘陵集落の中では数少ないオープンエリアであり、基隆市政府のチームは、その特殊な地理条件と空間的な広がりを通じて、ここが西岸の観光における最新のハイライトになるよう試みている。
太平國小は閉鎖された後、まず基隆市政府の“秘密基地”として生まれ変わった。この場所で多くのプロジェクト会議が開かれ、市政府の人員らがここで無数の汗と涙を流した。本案件を受託した建築家は、大胆にも内部を吹き抜け空間にして、建物としての視野を広げた。山の上に書店を開くと聞いた当初は、正気の沙汰ではないとも感じたが、この街の理想のために、そして太平國小が希望を伝える場所になるようにと、ついに「太平青鳥」出店を成し遂げたのだった。この書店オープンは2021年の基隆文化界における一大イベントで、独立系書店の開幕に興味を引かれた1000人近くもの人々が関与した。これは台湾の市民による基隆への賛同である。林右昌基隆市長は「学校は元々、学問を授け、知識を伝え、希望を創造する場所だ。太平國小の廃校以来、市政府はずっとこの場所の未来を思索し、書店及び市政を動かすエンジンへと生まれ変わらせた。ここには深い意義があると言える」と語った。
書店は都市の価値と概念を駆動するエンジンである。ここ数年、基隆は文化を主体とした都市管理戦略の名の下に、基隆が有する歴史の美を発掘して、それを基隆という都市の美へとシフトさせてきた。少し前の沙湾文化公園オープンもその一例だが、太平青鳥の開幕はさらに重要な一歩となった。青鳥文化が経営する青鳥書店、華山1914文化創意産業園区と屏東・孫立人行館の南国青鳥、そして大安森林公園、四四南村等の書店は、どれも地元の特色を有しており、さらには都市における魂の窓であり、プラットホームである。太平青鳥が太平國小の比類なく美しい山海に登場したことは、基隆の文化を高める窓口となるだけでなく、芸術や歴史の深化に対してより大きな化学変化をもたらし、更に多様で広範囲な地域のエネルギーを動かしていくだろう。
太平青鳥のモットーは、基隆西岸の山腰にそびえ立つ“知識の灯台”になることだ。山と海を一望できる書店として、本を起点に台湾の読書文化を広め、台湾思想の炎が灯されることを願っている。将来は様々な文化・芸術活動が企画され、文化に溢れる基隆の西岸が、再び人々の眼前に現れることだろう! また、市長も青鳥がただの書店であるばかりでなく、台湾と基隆の希望を創造し、全く新しい可能性を生み出す場所になることを願っている。不可能を可能に変え、人々の心に存在する希望と想いを実現させること、それこそが基隆に根を下ろした太平青鳥書店の背景にある最も重要な意義なのだ。